研ぎ:工芸 クラフト道具

丸ノミの研ぎ:主に冠(カツラ)の挿げ直し

冠(かつら)の挿げ直し

彫刻をやっているというお客さんからです。

カツラがムチャクチャになっているので、研ぎに加えて、カツラの挿げ直しもしました。

日本の道具は、「鉋」以外鉄の部分を叩くのを嫌う傾向にあります。ノミを使う時は、カツラを叩くのではなく柄を直接叩きます。木より鉄の方が硬いから、鉄でできているカツラを叩けばいいじゃないかと思ってしまいますが、その結果が写真の「直し前」です。ここまで豪快にカツラがつぶれているのは珍しいですね。

「直し後」の様に木の部分を叩くようにしていると、木の柄がつぶれてゆくと一緒にカツラも移動してゆきます。柄が限界を超えて短くなれば、新しい樫材で柄を作り直せばよく、カツラが残っていれば、木の部分だけをあつらえれば良いわけです。大工さんや木彫家なら、木の加工はお手のものですが、鉄製のカツラを直すには鍛冶屋さんのお世話にならなければなりません。

外国のノミにもカツラはありますが、どうも木槌を使うことを前提にしているらしく、このような構造にはなっていません。しかし、金鎚にくらべて木槌は密度が低いので、打撃力も低くなります。ノミを金鎚で叩くため柄が消耗してゆくことを前提としたデザインとして日本のノミが出来上がっているのです。

それなら、柄の部分もすべて鉄で作ってしまえばよいのではと考えますが、実際にそういうノミがあったそうです。それを使ったことのある大工さんの話では、「手がしびれるのでダメ」ということでした。加えて相当重かったのではないかと思います。

-研ぎ:工芸 クラフト道具

© 2024 研ぎや大須|愛知県名古屋市中区