和包丁の柄のすげ替えです。
包丁の柄に限らず斧も鋸も日本の道具の柄は西洋のものに比べて大変シンプルです。鋲などはされておらず、ナカゴを釘の様に柄に打ち込んであるだけです。おまけに規格化されているので、劣化・破損してもメーカーの違いに関係なく取り換えが可能です。日本家屋の建具や畳が規格化されているのに似ていますね。
和包丁の柄はもともと、消耗品なのです。
「ナカゴが錆び錆びでは?」と思いますが、高級品であればあるほど少々の錆びではびくともしないほど頑丈にできています。
「鉄のナカゴは柄の中で錆びるから抜けにくくなるが、ステンレスのは錆びないので抜けてくる」とナカゴが錆びるのを肯定的にとらえる刃物業者もいます。釘を打つ時に塩水につけて錆びやすくして抜けないようにするという話を聞いたことがありますが、包丁でも柄とナカゴの隙間に塩水を入れるという技もあります。
最近は、海外受けを狙ってか、芸術的な意匠を凝らしてナウマンゾウの牙や貝、それからきれいな樹脂の塊を使ったものがありますが、そういうものは、ナカゴを打ち入れて柄の復元力で止めることが難しいので、接着剤で止めます。伝統的な木の柄でもナカゴを短くして材料を節約したい場合は接着剤が使ってあります。
(2020年5月)